世界三大ワイン生産国の一つであるスペイン※。スペインのワインは世界でも最高品質であり、また文化・歴史における重要性でも注目されています。
スペイン産ワインのキーワードは、「多様性」でしょう。国内は地域ごとで様々な風景や気候、文化を有しており、加えてワインの醸造方法も幅広いものである、といった点を背景に、ここで生まれるワインは非常に多様性に富んだものとなっているのです。
ワインと言えばフランス、というイメージが強い方も多いかもしれませんが、世界ではスペイン産ワインのレベルと多様性は一目置かれているものです。ユニークなスペインのワインについて知っていたら、お洒落で少しかっこいいと思いませんか?
それでは、スペイン産ワインの特徴を知るために、9つのポイントを見ていきましょう。
※国際ブドウ・ワイン機構(OIV)によれば、2022年時点で、スペインはイタリア、フランスとともに世界のワイン生産量の51%を占めています。
スペイン産ワインの主要なポイント
1. 地理的多様性
スペインのブドウ畑面積は世界全体の13%に相当し、面積において世界最大の国となっています。数字にも表れているように、スペインはその地理的位置と多様な土壌、恵まれた気象条件によってブドウの育成に最適な場所なのです。
国内の地理的多様性は目覚ましく、北はガリシアの涼しく緑豊かな地域から、リオハの暖かく乾燥した地域、南はカナリア諸島の微気候帯まで、様々な気候と風景が存在しています。国内各所に広がるワイン産地のそれぞれが独自の気候と土壌を持つことになり、その環境に適合して育成されるブドウ品種もまた、バラエティに富んだものとなっているのです。
こういった地理的多様性が寄与することで、スペインでは非常に多彩なスタイルを持つワインが生まれています。
2. ブドウ品種
スペインが誇るブドウ品種は約600とされています。特に、固有品種と土着品種の宝庫として知られており、その多くが世界の他の地域では見ることができないものです。
著名な品種は、赤ブドウでテンプラニーリョ、ガルナチャ、モナストレル、白ブドウでアルバリーニョ、ヴェルデホ、ビウラ、など。通常、各地域ごとで代表的な独自のブドウ品種が存在します。
3. 産地と原産地呼称制度
スペインのワイン産地の数は、地理的分類により確認されているものだけで138産地もあります。その中でも特に有名な産地は、リオハ、リベラ・デル・ドゥエロ、プリオラート、リアス・バイシャス、ヘレスなど。各産地が異なるテロワール※を持ち、その影響を受けることで生まれる、特徴あるワインを生産しています。
スペインには原産地呼称制度と呼ばれる、とりわけ高品質なワインを生産する産地を認定するための、いわゆる格付け制度が存在します。認定に当たっては非常に細かく厳しい条件が設定されており、格付けの7つの分類のうち最上位のDOCa(特選原産地呼称ワイン)とDO(原産地呼称ワイン)には、それぞれ2つの産地、70の産地が認定されています。
※「テロワール」は、土壌や気象条件、立地、ブドウ品種、地元の習慣など、特定の地理的位置においてワインの特性に影響を与える要因の組み合わせを意味する、フランス語由来の言葉です。スペインのワイン醸造において、テロワールはワインの特性と風味のプロファイルを形成する上で重要な役割を果たしています。
4. 熟成カテゴリ
スペインのワインは、その熟成度合い(熟成期間)によって分類がなされています。
分類の基準は、赤ワインや白ワイン、カヴァなどワインの種類によって異なります。また、分類をより厳格にする目的で、一部の産地では異なるルールのもとで基準が制定されている場合があります。
主要な分類カテゴリは、熟成期間の短いものから、ホベン、ロブレ、クリアンサ、レセルバ、グラン・レセルバ。一般的に、熟成期間が最も長いグラン・レセルバのワインは、プレミアムとみなされ価格が高い傾向にありますが、熟成期間の長さと品質は連動するというわけではなく、異なる特徴を持つワインとして分類がされていると理解した方が良いでしょう。
5. ワインの種類
スペインワインの代表的カテゴリは、赤ワイン、白ワイン、カヴァ、シェリー※。これらどの種類のワインにおいても最高品質が守られており、国際的に地位が確立されています。
赤ワインは、国内各所にある世界的に有名な多くの産地から生産され、ブドウ品種や醸造方法、熟成期間も多種多様。スペイン産の赤ワインと言えば、世界の愛好家を唸らせるものです。近年特に注目が高くなっている白ワインも、ボトルごとが持つ新鮮さ、酸味、アロマで、尽きることない楽しみを与えてくれます。
国全体で広く生産される赤ワイン・白ワインの一方で、特定地域との結びつきが強いカヴァとシェリー。世界三大スパークリングワインとされ、伝統的な製法が守られていることで有名なカヴァ。カタルーニャのコムタッツ・デ・バルセロナ地域を主要産地とし、全体の95%以上がここで生産されています。シェリーは、アンダルシア地方のヘレスを中心に、特有の醸造プロセスでつくられる酒精強化ワイン。シェリー・トライアングルと呼ばれる、ヘレス周辺の特定地域でつくられたものだけがシェリーと呼ばれますが、辛口から甘口まで実に多彩なスタイルと様々な種類が存在しています。
※本記事では、スペインワインの代表的カテゴリとして、赤ワイン、白ワイン、カヴァ、シェリーを取り上げています。ワインの種類を細かく見ていけば、その他にも地域ごとに多数の種類が存在します。例として以下、関心のある方は参考までにご覧ください。
カヴァDOから独立し誕生したスパークリングワイン「クラシック・ペネデス」「コルピナット」、バスク地方を中心に生産される微発泡白ワイン「チャコリ」、マラガに起源を持つ甘口酒精強化ワイン「マラガ」、カタルーニャを中心に生産されるイタリア起源の酒精強化ワイン「ベルモット」、天然で酒精強化レベルのアルコールを含むモンティーリャ・モリレス産のワインやアリカンテ産「フォンディリョン」、など。もちろんロゼワインも生産されています。
6. 伝統と文化的重要性
ワイン醸造の歴史が3000年以上続くスペイン。その起源は紀元前1100年頃とされています。今日まで、ワイン醸造の技術や手法において伝統が守られながら、独自のワイン文化が発展されてきました。
スペインにおいてワインは重要な文化的側面を担っており、特にその多彩な食文化において、なくてはならない存在となっています。豊かさで有名なスペイン料理ですが、その美食体験を完璧につくりあげるために、ワインを楽しむことは必須なのです。
また、全国に点在するワインの産地では、地域のブドウ栽培を祝う伝統的な祭りやイベントが開催されており、スペインでワインがいかに文化の一つとして称賛されているかが表れています。
7. イノベーション
伝統的なワイン醸造技術が大切に守られているスペインですが、新しい現代的なアプローチも行われています。革新的な技術と伝統的手法の融合も行われ、歴史を尊重しながらも常に新たな変革を起こしています。
例えば、ワイン醸造やブドウ栽培に新技術を投入するだけではなく、ブレンディングや熟成・発酵の手法を新たなものにしたり、バイオダイナミックやオーガニック、サステイナブルな栽培方法を導入。また、地域の持つ独自性をより顕著に表現したワインや、新しいタイプのスパークリングワインの生産も行われています。こうしたアプローチは全国で見られますが、特にカタルーニャのペネデス地域がその革新性で有名です。
8. 食べ物とのペアリング
食事に合わせるのに良く適している、として知られるスペインのワイン。
赤ワイン、白ワイン、カヴァ、シェリーといった種類のみならず、産地、ブドウ品種や熟成期間など、ボトルごとに特徴を持つワインは、それぞれ異なる料理と組み合わせることで、相互の調和や風味を無限に楽しむことができます。ワインは多様性に富んでいるために、ペアリングに生まれる奥深さと面白みも尽きることはありません。もちろん、スペイン料理全般、タパスやパエリア、ハムやチーズ、伝統料理やモダン料理など、様々なタイプの料理によく合いますし、寿司や和食とおしゃれに楽しむことができるワインもあります。
スペインでは食文化の存在が非常に大きく、また食の分野において世界を牽引しています。スペインを訪れると、国内の至る所でバルやレストランの数が多いこと、そしていかにレベルの高い料理や多彩なワインが提供されているかが分かります。加えて、世界的に名の知れたバスク・クリナリーセンターなどの料理学校や、多数のミシュランレストランも存在し、こういったトップクラスの食のフィールドにおいてもワインが重要な役割として組み込まれています。スペインでは、食べ物あってこそのワイン、またその逆でもある、とも言えるでしょう。
9. 国際的な評価
スペインのワインは国際的に高い評価を得ており、多くのワイナリーが世界でもトップの評価や賞を受賞しています。最も権威ある世界最大級のワインコンクール、デカンター・ワールド・ワイン・アワード(DWWA)では、リオハやリベラ・デル・ドゥエロのワインを中心に、スペイン産ワインが数々の高ポイントを獲得してきました。
世界三大ワイン輸出国でもあるスペインですが、品質保持のため各地方ごとで設けられた厳しい規制をクリアした上で、全てのワインが生産され、輸出されています。ワイン醸造に関わる人々の絶え間ない努力によって、世界的なワイン業界での地位が守られているのです。
まとめ
以上の9つのポイントを中心に、複数の要素が融合しながらスペイン産ワインは生み出されています。
スペイン産ワインが世界中の愛好家を惹きつけているのは、その高品質さだけでなく、背後にある国の文化や伝統、そして醸造への尊重と情熱が注目されているからなのです。
レストランや食品店でスペインのワインを見る目が、少し変わりましたか?スペイン産ワインのもつストーリーを理解することで、ボトルを手に取ったときのワクワクや、一口を含んだときの味わいが、一層強く感じられますよ。